生クリームとバターでリッチに仕上げる、今どきフレンチトースト
画家が美しさの秘密を解き明かそうと色彩や構図の法則性を探るように、料理人はおいしさがどうして生まれるのかを研究しつづけている。みんなから愛されているおいしい定番デザートたちを、そんな作り手の目線から眺めてみたら何が見えるのだろうか。
この連載ではフランスの星つきレストランで修行を積んだMr. CHEESECAKEシェフ田村が、シェフの目線で「おいしい」の要素を分解し、その秘密にせまります。
第2回目はフレンチトーストです。
フレンチトーストを、とろけるような食感とリッチな味わいに
フレンチトーストはフランス語では「pain perdu(パン ペルドュ)」と呼ばれており、直訳すると「失ったパン」という意味になります。このなんとも不思議な名称になった理由は、日にちが経ち固くなってしまったバゲットを食べるためにフレンチトーストの液を使って柔らかくしたことから、と言われています。
卵に牛乳、そして砂糖というシンプルな材料からは、「家にあるものを使っておいしく食べよう」という生活に根ざした賢さが伺えるように思います。
今でもこういう食べ方をする場合もありますが、田村は食材を手軽に手に入れられるようになった今の時代だからこそ作れる味わいのフレンチトーストもあっていいのではないかと考えました。
田村:
「以前Mr. CHEESECAKEでもフレンチトーストのレシピをご紹介しました。僕が目指したのはリッチな味わいな上に、とろけるような食感のフレンチトーストです。
バゲットを使うとどうしてもザラザラとした食感になりますし、キメが荒く液も吸い込みにくいので、使うのは食パン。おすすめはPascoの超熟の4枚切りです。パンの製法によって液の染み込み方が違うのですが、超熟は生地が滑らかでしっとりしていて、液を吸いやすいんです。そのため中がとろけるような食感のフレンチトーストが作れます。
さらにパンが多ければ多いほど液を吸えるから、厚い方が良く、4つ切りがおすすめなんです」
フレンチトーストを再解釈。カスタードクリームを作るように、液を作る
フレンチトーストは卵と砂糖と牛乳を混ぜるだけでもおいしく作れますが、さらなるおいしさを目指し、生クリームやバニラビーンズなどを贅沢に使ったのも、田村のレシピの特徴です。
田村:
「ただ材料を混ぜるだけだと、香りがあまりしなかったり、パンにあまり染み込まなかったりします。けれどもカスタードクリームみたいな作り方をすることで、より深みのある味わいになるのではないかと考えました。
まず、卵に砂糖を加えて混ぜます。そして生クリームを温めてトンカ豆やバニラビーンズの香りを移し、それを卵の液の方に移すんです。カスタードクリームの場合はこの後に鍋に入れて火にかけるのですが、フレンチトーストですからパンを焼くことで完了させます」
さらに、焦しバターで一手間加えてあるのも魅力のひとつです。香ばしい香りが奥行きを作るのはもちろんですが、生クリームやバターなど脂肪分の多いものを加えることで、よりリッチな味に仕上がります。田村曰く、食パンがブリオッシュになるイメージとのこと。
「カスタードクリームみたいな作り方」ですから、味わいもカスタードのようにクリーミーで贅沢なんです。
パンの中にプリンを作るようなイメージで、じわじわと焼く
一晩じっくり液を染み込ませた後は、弱火と中火の間くらいでじわじわと焼きます。卵液にゆっくりと火を通すことで固くならず、まるでプリンを作るようにぷるぷるとした状態に仕上がるのです。
バニラやバターの豊かな香りと濃厚な口どけがたまらないフレンチトースト。
誰でも簡単に作れるレシピだからこそ、ちょっと工程を見直してみるだけで新しいおいしさに出会えます。
ぜひおやつの時間に味わってみてください。
フランスの星つきレストランで修行を積んだMr. CHEESECAKEシェフ田村が、シェフの目線で「おいしい」の要素を分解し、その秘密にせまる連載「おいしいを分解してみると。」
Vol.1 「固め」と「とろり」どっちが好み?プリンのおいしさの秘密
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