人の手が作るゆらぎを大切にしたい、スタイリストの器選び
おいしいという感覚を紐解いてゆくと、まるでひとつの舞台のように、あらゆるものが豊かに関係してできあがっているのだと気づきます。
香り、色彩、質感、温度、音。私たちの体が感じとるすべてが絶妙に絡み合い、コップの水が溢れるかのようにある値を越えたとき、人は思わず「おいしい」と頬をゆるめるのかもしれません。
私たちMr. CHEESECAKEはチーズケーキを通して、「おいしいと感じる体験」を次の次元にシフトさせることを目指してきました。そしてチーズケーキを食べるときの環境や時間も、「おいしさ」を作り出す大切なものなのだと考えています。
そこで今回は「おいしさ」を作る要素のひとつである「器」にフォーカスし、さまざまな方の日々をおいしくしている器をご紹介できたらと思います。
連載の第1回目は、Mr. CHEESECAKEのスタイリングを担当してくださっているスタイリストの木村遥さんです。
「自然」を感じる、ニュアンスのある器を求めて
木村さんに見せていただいた器は、どれも作家もの。ゆらぎのある形であったり、釉薬のムラが詩的な表情を見せていたりと、繊細な雰囲気をまとっているものが多いように思います。
その理由を聞いてみると「器の中に自然を感じるもの」を集めているとのことでした。
木村さん
「規格化された食器よりも、手作りのニュアンスを感じられる、形が不揃いのものや、ムラがあるものを選ぶことが多いです。
そういった器からは、自然が持つエネルギーのようなものを感じ取れる気がします。
私は現在都心に住んでいるので、心が自然の力を求めているのかもしれないですね」
器以外にも河原で拾った石や雫のような形をしたガラスを、愛おしそうに並べる木村さん。
ムラや形が完璧ではないからこそ生まれた隙が、お互いを受け入れあい、心地よい調和を作っているように感じられます。
さて、そんな木村さんのお気に入りの器たちを、ひとつずつ紹介していきます。
クリスチャンヌ・ペロションと安藤雅信のぬくもりがある白
木村さんが時間をかけて少しずつ集めているという、Christiane Perrochon(クリスチャンヌ・ペロション)の器。イタリアのトスカーナの作家である彼女の作品はやわらかな色彩とポエティックな造形性から、日本でも多くのファンを獲得しています。
一緒に並べられたのは、岐阜県多治見市にある「ギャルリ百草」を主宰する安藤雅信(あんどうまさのぶ)さんとミナペルホネンのコラボレーションの皿。安藤雅信さんの器は、感性から導かれる独特の揺らぎが他にはない魅力になっており、見た者の心をつかんで離しません。
木村さん
「どちらの器も、釉薬のムラや余白が美しいなと感じます。丸ではない形も、とても魅力的です。
クリスチャンヌ・ペロションの作るニュアンスがある白色が好きで、特にマットな白色を集めています。マットな白い器にお料理をのせるとお料理の艶が引き立ちます。」
肉料理に合わせたい、石のような器とボード
「惹かれる石があると、思わずひろってしまう」と語る木村さんは、作家が作る石のような造形にもついつい魅力を感じてしまうそうです。
そんな彼女が見せてくれたのが、どっしりとしている石のような器。色も濃く重量感がありますが、不思議と剛健さはなく、ひんやりと透き通るような繊細さをまとっています。
木村さん
「Gurli Elbækgaard(グーリ・エルベックゴー)さんは、デンマークのコペンハーゲン在住の作家で、北欧の自然をモチーフに器を作っています。石に生える苔などからインスピレーションを得ているそうです。
肉料理などを載せると、とてもきれいな器だと思います」
木村さん
「木工作家の内山玲さんのカッティングボードは、ご自身が拾った石を造形のヒントにしているそうです。まん丸ではないゆるっとした滑らかなラインが、確かに石のようだと感じ、つい手にとってしまいました」
料理も雑貨も受け止める、ウッドボードと木の器
陶器とはまた違った良さを持つ木製のアイテムたち。ひとつあるだけでも食卓にリズムが生まれ、さらに木が持つあたたかみが食欲をそそります。
木村さん
「余白をたっぷり楽しめる大きめのものが好きで、ハーマンミラーのものを愛用しています。ウッドボードはキッチンに立てかけてあるだけでも目に楽しいです」
木村さん
「まん丸のものは、Metsä/Skogen(メッツァ/スコーゲン)のもの。おせち料理を盛り付けたくて購入したのですが、今はお茶や果物を入れてインテリアとして使ったり、パンなどを入れて食卓に出すことが多いです。」
柄の食器も、手仕事を感じさせるものを
ここまでご紹介した器はシンプルで色もモノクロばかりでしたが、こちらは大胆な柄物たち。こうしたカップや皿はあまりペアでは揃えず、一人の時間に単体で使って楽しんでいるそうです。
木村さん
「柄物でも、プリントではなく人の手で絵付けされたものを選んでいます。遅く帰った深夜など、疲れて沈んだ気持ちを少しあげたいなという時に柄物を使うと、人のあたたかみが感じられてしみるんです。
アイディアを練りたい時にも使っていて、お菓子やお茶を淹れて一人の時間を楽しんでいます」
マグカップと小皿はsudio oyama(スタジオ オヤマ)のもの。スウェーデンで活動する陶芸家・大矢真義(おおやまさよし)さんが手がけているブランドです。なんともユニークな曲線が描かれたマグカップの柄の名前はUDON(ウドン)というのだそう。あのうどんがこんなにも鮮やかな絵柄に昇華されたのかと、面白さで思わず心が浮き立ちます。
木村さん
「竹村良訓(たけむらよしのり)さんの器は、モダンな絵付けがとても魅力的だと感じています。
あまり量は持っていないのですが、食卓のどこかに一点投入すると、とても良いアクセントになってくれるんです」
器の色は控えめにして、食材を引き立たせたい
作られた国も形もさまざまですが、不思議と響き合い、澄んだ空気感を作り出していました。
そんな器たちは、作家ものであるということの他に、色があまり使われていないのも特徴のひとつです。
木村さん
「食材が持つ自然の色は、本当に美しいと思うんです。だからできるだけそれが際立つようにと、白や黒などベーシックなカラーの器を選ぶようにしています。
特に艶ものない控えめでマットな白が、私のお気に入りです」
盛り付ける料理を引き立たせるニュートラルなカラーと、一人時間を豊かにしてくれる柄物の器たち。
その両方が、木村さんの日々をおいしく彩っているようです。
Profile
木村遥(きむらはるか)
スタイリスト。雑誌、書籍、広告、webなどで食まわりを主に、ライフスタイルのスタイリングを手掛けている。
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