JOURNAL

2020/11/13

「王道」から外れて、表現者として生きる 特別対談〜現代美術作家 加賀美健×Mr. CHEESECAKE 田村浩二〜

Mr. CHEESECAKEでは今秋、ブランド史上初となるオリジナルショッパーを製作しました。現代美術のアーティスト 加賀美健さんとのコラボです。 

加賀美さんは、社会現象やカルチャーなどをジョーク的発想に転換し、彫刻や絵画、パフォーマンスなどメディアを横断して美術作品を発表しつづけている「現代アートの異端児」。そんな加賀美さんの手書き文字が目を引くショッパーはMr. CHEESECAKEがすっぽり入るおおきさで、レジ袋をオマージュしています。

今回のジャーナルはショッパーの発売を記念し、加賀美さんとMr. CHEESECAKE代表の田村の対談をお届けします。ずっとオンラインでやりとりしていたふたりがはじめて直接ことばを交わしたとき、「アート」と「食」、異なる業界ながら表現者としての共通点が立ちあらわれてきました。

■イメージがまったくちがうアーティストとコラボしたわけ

田村 ようやく、お会いできました。

加賀美 これまでずっと打ち合わせもやりとりも、全部Zoomでしたもんね。

田村 ええ。ショッパー、ミスチとしても初の試みだったんですが、こころから満足いくものができました。なんといってもかわいくて。……見てください!


「Mr. CHEESECAKE × Ken Kagami」詳細

加賀美
 おお、いい感じですね! この素材もおもしろいな。なんだろう?

(スタッフ) 洋服についている洗濯タグと同じ素材です。実用的かつユニークな素材に挑戦してみました。

田村 ダメ元でしたが、加賀美さんにお願いしてホントによかったです。


「現代アートの異端児」とも呼ばれる加賀美さん。その作風とMr. CHEESECAKEのイメージは大きく異なるが、田村は「だからこそおもしろい」と加賀美さんにオファーしたそうだ

加賀美 はじめは「大丈夫かな」と思いましたね。依頼をいただいてMr. CHEESECAKEのホームページを見てみたら、ものすごく整ってたから(笑)。ただ、ぼくのこういう作風を「わかって」オファーしてくれたはずだし、うつくしい絵を描いてくれとかじゃないだろう、と思い直しましたが。

田村 よかったです(笑)。制作の過程は、実際にかたちになったもの以外にもいくつか案を出していただきました。読者の方に、泣く泣くあきらめた案も紹介したいんですが……いいですか?

加賀美 もちろんです。


 
田村 ぼくね、この「スイーツ団地」、大好きです。社内での人気も高かったんですけど、「コラボレーションしょっぱなにしてはちょっと飛びすぎ」ってことで断念して……。

加賀美 ははは。でもいいですよね、これ。



田村
 不思議なんですが、いったいどうやってこんなアイデアを思いつくんですか?

加賀美 これは完全にだじゃれですよ。「スイーツ男子」って言葉をひねっただけ。

田村 いやいや! ふつうは「スイーツ男子」から「スイーツ団地」、連想しないですよ。団地って言葉、久々に聞きましたもん。

加賀美 それは自分が団地育ちだからかな。ぼくの場合、自分が見たり聞いたりしたもの、体験したものが作品のベースになっているんです。だから今回は、「デザート」や「スイーツ」ってことばから記憶をたぐり寄せて、ふくらませていった。で、「団地がケーキ食ってたらおもしろいかな」って。朝起きてからそういうことばっかり考えてるから(笑)。



これもそう。いるじゃないですか、カフェで、こっちは1皿まるまる食べたいのにシェアしようって提案してくるやつ。

田村 います、います(笑)。

加賀美 ぼくは街を歩いてるときも、ものすごく目や耳を使っています。基本的にインスピレーションはひととの会話とか、道に落ちてるもの、街の風景なんかから受けるから。ま、タダのものばっかりですね。

田村 だからかな、加賀美さんのアートって知識がなくてもわかるというか、ただ「おもしろい!」って感じられますよね。「この現代アートの背景や意図は……」って考えなくていい。

加賀美 それは、ぼくのあたまが悪いから(笑)。スマートなアーティストは変化球を投げるし、コンセプチュアルな作品をつくります。むしろそれが大多数。でも、ぼくにはそれができない。だから、彼らが考えないことで勝負するしかないんです。

これ、やってることは小学校のころと同じですよ。ぼくみたいに勉強が苦手で坊主頭のモテないやつが勝負するには、他の子が考えつかないようなことを表現するしかなかった。子どものころの「自分に満足できない時間」があったから、いまこうしてアートをやっているんだと思います。

田村 なるほど。このショッパーも、そんな加賀美さんの作風が見事にハマったなと思います。

そもそも今回の企画は、「異なるジャンルとコラボしたい」というぼくの思いからスタートしました。ぼくはもともとレストランの料理人で、いまはこうしてチーズケーキをつくっています。でも、じつは、こだわりがあるのは「食」に対してではないんですよね。突き詰めると、「表現」というか。

加賀美 はい、はい。



田村
 これまでを振り返ってみて、おいしいものをつくるのはもちろん楽しかったけれど、自分がうみ出すものによってひとの気持ちや行動が変わる瞬間が好きなんだなと気づきました。たとえ味覚を失っても、自分はきっとほかの方法でなにかしらの表現をつづけるだろうなと。

そうして「表現」について考えるなかで、ミスチでも、いろいろなジャンルとコラボしてみたくなったんです。ミスチが持つ表現の幅だけでは実現できない世界を見てみたい。スイーツや食に限定せず、表現をかけあわてみたい。その化学反応によって、あたらしい価値を世の中に提示できるはずだって。

加賀美 なるほど。

田村 その第一歩目として「アート」、中でもミスチとイメージのとおい加賀美さんと組めて、ほんとうによかったです。


■ふたりとも「王道から外れている」


田村 そもそも、加賀美さんはなにがきっかけでアートの道へ入られたんですか?

加賀美 もともとはファッション畑にいて、19歳から25歳まで、有名なスタイリストさんの下でアシスタントをしていました。でも、カメラマンやモデル、ヘアメイク、編集……いろんなひとと仕事をするのが向いてないなと思うようになったんですよね。みんなで意見を合わせるんじゃなくて、自分だけでぜんぶ考えてみたいって。



それはアートならできるんじゃないかと考えて、貯金をはたいてアメリカに渡りました。まずはサンフランシスコで語学留学して。学校にはほとんど行きませんでしたが。

田村 でも、有名スタイリストさんに6年間ついたってことは、「いよいよ独立」ってタイミングですよね? キャリアとして、いわゆる王道を歩んでいたのでは。

加賀美 「6年間もアシスタントをやったなら、スタイリストになった方がいいんじゃない?」ってみんなに言われました。もったいないって。

田村 はー、すごい。アートの道でやっていける自信があったんですか?

加賀美 自信? そんなのないですよ! アメリカでは拾ったゴミや安く仕入れた材料で作品をつくりつつ、美術館やギャラリーに行って「いつかここに飾れたら……」とぼんやり思っていましたね。

田村 コネなし、経験なしですもんね。そこからどうキャリアを築いていったんでしょう。

加賀美 帰国後、つくった作品を好きなギャラリーに持って行って「見てください」って頼みました。それをたまたまギャラリストが気に入ってくれて、一歩目がスタートした感じです。そこから個展をひらくまで何年もかかりましたけど。

田村 なるほど。キャリアの話で共感したのが、ぼくもシェフとしては「王道」から外れたんですよ。加賀美さんとちがってずっと「食」の業界にいるので、まったく同じではないんですが。

加賀美 もともとはレストランにいらっしゃったんですか。

田村 はい。20代はフランスで修行して、帰国後は星つきのレストランで必死にはたらいて、32歳であるガイドブックの「期待の若手シェフ賞」をいただいて。



はたから見れば順風満帆だったと思うんですが……その受賞で逆に、立ち止まっちゃったんですよね。

加賀美 というと? 

田村 賞をもらうと、食べ歩きが好きなひとや同業者に注目されるようになるんです。でも彼らのスタンスって「お手並み拝見」というか分析的というか……食べ方を見ているとわかるんですよ。でも、それって楽しくないじゃないですか。

加賀美 はああ、なるほど。有名になったり賞を獲ったりすると周りの見る目が変わるのは、アートの世界でもありますね。

田村 それで、「だれが食べてもおいしくて、ハッピーになるものをつくりたい」と思ってつくりはじめたのがこのチーズケーキです。



シェフの仕事のかたわら、睡眠時間を削ってつくって、インスタグラムで売りはじめて、事業になって、レストランを辞めて、いまこうしてたくさんのひとに食べていただけるようになって。

みんなが想像するようなシェフのキャリアからは外れたけれど、ストレートに「おいしい」と感じてもらえるものづくりができているので幸せだし、楽しいです。

加賀美 うん、すっごくおいしかったです。3種類の食べ方、ぜんぶ試しましたよ。ぼくは冷凍庫から出したてのいちばん固いのと、全解凍したやわらかいのが好きでしたねえ。



田村
 おお、うれしい! ありがとうございます。


表現者としてちがうところ、似ているところ

田村 加賀美さんは表現者として、自分がつくるものに対して迷うことはないんですか? 「自分はいいと思うけど世の中はどうだろう」とか。

加賀美 ない。まったくないです(笑)。

田村 即答(笑)。



加賀美
 ぼくは今年で46歳ですけど、40歳を境にまわりの視線が気にならなくなりました。まあ20代、30代のころからほとんど気にしてなかったけど、本格的にどうでもよくなったのが40歳かな。

田村 へええ。ぼくはあと5年か……。

加賀美 結局、作品をつくっていて、自分が楽しければそれでいいんですよ。作品をもうひとりの自分に見せて「おもしろい!」と思えたら、ほかのひとに「つまらない」と言われても構わない。自己満足していたいし、もし飽きることがあったらやめると決めています。

あ、でも逆に最近は、SNSで悪口を言われてからが本番だなと思うこともありますね。ぼくも作品に対してたまーにネガティブなことを書かれるんですけど、うれしいですもん。

田村 ええーっ、うれしい、ですか? ……じつはぼく、ホント批判に弱いんですよ(笑)。「まずい」って意見を見るのはつらいですし。

加賀美 だって、少なくとも目に入ることができたってことじゃないですか。とくにアートなんて好きと嫌いがあってあたりまえだし、「わざわざ書く」のは気にしてくれてるってことだし、批判されたとして作風を変えるわけでもないから、なにを言われても気にしない。もちろん、度が過ぎる悪口を言われるのはイヤだけど。



田村
 たしかに、ぼくはいつも「想像を超えたい」「爪痕を残したい」と思っているので、その「気にしてほしい」感覚はわかります。食の事業だからひとりでも多くのひとに伝わらなきゃいけないんですけど、一方でいちばん不安なのは、当たりさわりないもの、だれにも批評されないものをつくることで。

加賀美 うん、うん。

田村 だから多少きびしい批判があっても、「めちゃめちゃうまい!」って熱狂的なファンがいるほうがうれしいのは、まちがいないです。

はじめにも言いましたが、ぼくにとってはチーズケーキをつくるのも表現のひとつだから、毎回自分らしく勝負したい。「世の中のひとはこういう味が好きなんでしょ」ってテンションでものづくりをしたくないんですよね。

加賀美 それ、ぼくもまったく同じ感覚です。今回のコラボもそうですが、毎回どう挑戦して、どう自分らしい表現をするか考えてますもん。それに、みんなからの「いいね」が増えたら「気をつけないと」って思ったり。

田村 「いいね」で? どういうことですか?

加賀美 たとえばインスタ。ぼくは自分の中でおもしろいと思ってアップしたものにかぎって「いいね」が少ないんですけど、その状態を軸にしているんです。で、そういった投稿に「いいね」が増えてきたら、ちょっと気をつけなきゃって思うようにしています。



田村
 はーっ。ふつう、逆ですよね。「いいね」を増やそうとする。

加賀美 ですよね。でもぼくの場合は、「いいね」が増えてきたら危険信号。「加賀美さんの世界観、わかったな……と思ったらやっぱりわからない」みたいな状態でいたいのかな。

田村 あはは、ついてこさせないぞ、と(笑)。


■アウトプットまでに時間をかける

加賀美 それにしても田村さんって、こっち(アーティスト)寄りの考え方を持ってますよね。ぼくの知ってる「料理人」じゃない。でもその姿勢で、たくさんのひとにとっておいしいものをつくっているのがすごいなあ。

田村 でも、シーズナルフレーバーは毎回プレッシャーがすごいです(笑)。



加賀美
 試行錯誤して?

田村 いや、試作はかなりすくないほうだと思います。あたまの中で味の構成を考えるほうに時間をかけて、試作はだいたい3回ですね。1回目とりあえずつくって、2回目で調整して、3回目に微調整するくらい。

加賀美 たったの3回! それはすごい。

田村 1回目で「ちがうな」と思ったら、その組み合わせ自体をやめちゃいます。食材のロスもいやですし。

うまくいかないときって、うまくいかない原因がわかっていないから、うまくいかないんですよ……まどろっこしい言い方ですが(笑)。だから手を動かす前、「うまくいきそう」になるまで考えきることが大事ですね。

加賀美 いや、それもまったく同感です。じつはぼくもつくるの、はやいんですよ。こねくり回したものよりパッと思いついたほうがおもしろいから、一度決めたらブレない。とくに展示の準備ははやいかな。あたまの中をそのまま出しちゃう。

田村 加賀美さんは人生や生活すべてが作品づくりにつながっているからこそ、手を動かしてからがはやいんでしょうね。ほら、ピカソの100万ドルの絵と同じで。



加賀美
 ああ、ちいさな紙に30秒ほどでサラサラと絵を描いて「100万ドル」って言ったエピソードですね。「この絵を描くために30年と30秒かかっているから」って。いいこと言いますよね、ピカソ。

田村 ピカソと比べるなんておこがましいですが、ぼくも若いころはなかなかおいしいものがつくれませんでした。でも、シェフとして必死で努力してきた時間があるから、いまのぼくがある。

加賀美 わかります。アートの世界は「1年が10年」っていわれるんです。ほかの分野のなら1年でできることが、10年かかる。いま、サンフランシスコに行ってから20年経ちました。まだまだこれからだけど自分の名前で勝負できるようになってきたし、次の20年が楽しみなんですよね。アートの世界には、かっこいいおじいちゃんもたくさんいますから。

田村 それはいいな、すてきです。



今日ははじめて直接お話ししましたが、考え方や表現への姿勢など、ジャンルはちがえど加賀美さんと似ているところが多くてうれしくなりました。このショッパーを世に出してどういう反応が起きるか、たのしみです。

(取材・執筆:田中裕子) 


製品情報



Mr. CHEESECAKE × Ken Kagami

商品内容:Mr. CHEESECAKE with Box 1箱とオリジナルショッパー1つ
発売日:2020年11月22日(日)午前10時
価格:¥4,860(税込)
詳細URL:https://mr-cheesecake.com/blogs/journal/20201110


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